安曇野のおいしい秘密

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おいしい牛乳はどうして出来るのだろう

ちいさな牛乳工場からの贈りもの - Passion

当ホテルの料飲マネージャーから、その牛乳屋さんがコーヒー牛乳を作るのにレギュラーコーヒーをネルドリップで淹れているという話を聞いて私は驚愕し、俄にはそれを信じられませんでした。そしてその牛乳屋さんに行って話を聞きたいとずっと思っていたのですが、春まだ遠い一日、大町市の市街地にある松田乳業をやっと訪ねることができました。そして行ってみてまた吃驚、その工場はわずか80坪という小さなものだったのです。

口福に与える

口副に与る

62歳の3代目社長、松田邦正さんが出迎えて下さり、早速白衣と帽子をお借りして工場を見学させていただきました。先ず原料乳に含まれる不純物を取り除くための濾過機の前に案内されました。社長は蓋を開けて、撹拌されているミルクの上に溜まっている細かな泡を指で掬い取り自分の口に入れた後で、「この泡でカプチーノを作ると最高だよ」と私たちにも試食を勧めてくださいました、「大腸菌がいるかも知れないけど…」と付け加えながら。冬場のミルクだからこそのまったりと濃い乳脂肪が舌の上で溶ける、フワッと軽い肌理細かな泡…。これを口にしながら、私は酒倉で槽口から垂れてくるわずかに炭酸ガスが混ざった出来立ての清酒を口にした時のことを想い出していました。そこに行かなければ味わえないものを口にすることができる幸せ…口福でした。

めったに見れない舞台裏

めったに見れない舞台裏

不純物が分離されたミルクは次の工程のために40℃以上の温度で加熱されてから、均質機(ホモゲナイザー)で乳脂肪を2マイクロメーター以下の細かい粒子にします。これにより乳脂肪が浮いて表面に生クリームの層ができるのを防ぐことができます。その後、殺菌タンクで雑菌を死滅させると、水道水とチルド水(1℃)で2度冷却され、製品となる殺菌乳が出来上がり、5℃以下の温度に保たれた貯乳タンクにストックされます。それから充填包装機で容量に応じて牛乳容器(500ml、180ml瓶)に充填され、各種検査のあと出荷されます。

おいしさの秘密はここにある

おいしさの秘密はここにある

松田乳業の原料乳は、1980年(S.55年)に3代目が引き継いだ当初は新潟県境の小谷(おたり)地区のミルクをメインで使用していましたが、現在は1日約3トン、安曇野育ちのホルスタイン種の牛から搾乳されたミルクを南信酪農組合から仕入れています。どうやら牛乳は殺菌温度とそれにかける時間で味に大きな差が出るようです。当時は75℃で15分間殺菌していましたが、保存性を高める必要性から85℃15分間殺菌に変更し現在に至っています。松田乳業ではこのほかに65℃30分間殺菌の、いわゆる低温殺菌牛乳も作っていますが、私は以前から85℃15分間殺菌牛乳の方が旨いと感じていたのでそのことを問うたところ、社長は正に我が意を得たりとばかりに「ぼくもそう思います。85℃の方が香ばしさがあるんですよ、ちょうど焼き魚の焦げ目のところが旨いようにね… 」と。一般の牛乳は130℃2秒間殺菌がほとんどですが、こだわりの85℃で15分間(=900秒)ゆっくり撹拌しながら殺菌することが松田牛乳の旨さのヒミツだったのです。一般牛乳の450倍もの手間暇を惜しまず徹底的に旨さにこだわると、80坪の工場じゃなきゃできないのかも知れないなあ…
アレレ、本題のコーヒー牛乳に入る前に頁が尽きちゃいました。次回に続きます。

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普通においしい牛乳とは凄いこと

前回紙面が尽きて書けなかった松田乳業のお話の続きを一くさり。「原料のミルクはどのメーカーも一緒だよ」と、意外なことを社長は仰言いましたが、<85℃15分間殺菌>という魔法をかけることで、どのメーカーとも違うあの旨い牛乳を作ることを編み出したことに敬服します。ありがとう松田乳業さん。

ネルドリップは本当!

ネルドリップは本当!

さて、私を松田乳業の取材に駆り立てたネルドリップコーヒーですが、その日私たちが工場に入るや、社長に指示された従業員の方が直径6~70cmもある大きなネル袋をセットしてコーヒーを抽出しはじめました。「あ々、本当だったんだ…」と感動している間もなく、社長はコーヒーのことを話し出しました。使用しているコーヒーはダートコーヒーの金沢ブレンド。なぜダートコーヒーなのか?それは牛乳製造に使うタンクやパイプを製造している富山県のメーカーさんに紹介されたのがきっかけでした。私もそうですが、ダートコーヒーはここ長野県では余り知られてはいませんが、北陸や関西以西でシェアを確保しているコーヒーメーカーです。その金沢ブレンドのアイスコーヒー用の豆…。そう言われればなんだか北陸の古都の奥床しい香りがそこはかとなくするような気がします。

さて、そのお味は?

さて、そのお味は?

丁寧にネルドリップされたコーヒーと、あの<85℃15分間殺菌>の旨い牛乳を1:1で混和したコーヒー牛乳、不味かろうはずがありません。まさに極上のカフェオレ。その味を飲んだことのない人に説明するのはとてもむずかしいのですが… 非常にスムーズで滑らかな飲み口、引っ掛かるものが何もなく喉をすべり降りてゆきます。キレの良い甘みは程良く ― そのヒミツは果糖を使用しているからで、これもまた松田乳業のこだわり!― あと味の良さも極立っています。変な混ぜ物があるとそれがあと味に残るものですが、このコーヒー牛乳には一切ありません。フツウに旨いのです。これってスゴくないですか。ワケのわからない食品や飲料が溢れかえっている昨今、このコーヒー牛乳の真っ当な味香に、そしてそんな正直な牛乳屋さんに感服しつつも心からの拍手を送りたいと思います。実は1970年(S.45年)頃には松本市の協同乳業でもネルドリップのコーヒー牛乳を作っていたのだそうです。それがパックなどの大容量の生産によって作り方を変えざるを得なくなったのだとか。今のコーヒー牛乳は主にインスタントコーヒーと脱脂粉乳を混ぜた物になってしまいました。松田乳業にもそのコーヒー牛乳のファンから「パックを作って欲しい」という声が届いているそうですが、手間と時間がかかるために、180mlの瓶詰だけで手一杯なのです。

学校の給食でも

学校の給食でも

大町市とその周辺の北安曇郡のいわゆる大北地域の6.500人の小中学生たちは学校給食で松田乳業の<85℃15分間殺菌>の牛乳を毎日飲んでいます。子どものうちから旨いものを口にし、良し悪しを知ることはとても大切なことだと思うのです。2時間余りの取材の最後に、社長は面白い話をしてくれました。大町市の南方に乳川(ちがわ)という北アルプスに源を発する川があります。そしてそれが穂高の地で中房川(なかぶさがわ)と合流して乳房川(ちぶさがわ)となります。旨い牛乳を作る場所にミルクに因んだ川が流れている、何かの因縁を感じます… 勿論、乳川といっても川の水が乳白色をしているわけではありません。川の砂が白砂のためにこの名が付いたようです。ホテルアンビエント安曇野では朝食バイキングで松田乳業【85℃15分間殺菌】の旨い牛乳をご用意しています。こちらも決してお忘れになりませんように。

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